悲惨な運命に翻弄されて流される男と、その家族(?)の物語。
「誰にとってもいちばん不幸なことがあるとしたら」
繰り返される変転と、流浪の末に彼らが得るものは何か。
「日の名残り」と並んで積んであったので、ついでに購入。"1000人が選んだハヤカワ文庫読者アンケートフェア"なるものの1位らしい。
・・・・・・しかし、読者アンケートでたった1000人って少ない気が?
幸運の星の下に生まれた大富豪、マラカイ・コンスタントは、宇宙の「時間等曲率漏斗」に落ちて複数の時間・空間に存在するようになった男、ウィンストン・ラファームドから、未来の運命を告げられる。
いわく、コンスタントは火星、水星、地球と渡り歩いて、タイタンへとたどり着き、ラファームドの妻と夫婦になるだろう、と。
予言など信じないコンスタントだったが、彼の世界は音を立てて崩壊し、全てを失い運命に流される日々が始まる。
基本、ユーモア
SF。滑稽でばかげた社会を描きながら、圧倒的な力を持つ絶対者の意図に踊らされる人々の、そこから生まれた諦念と、それぞれが最後にたどり着いた先を描いている。

主人公とその関係者は、絶対者であるラファームドの意思に踊らされて、彼の目的のため利用され、人生を乱される。
火星からの自殺的な地球侵略攻撃の生き残りたちは、「もう誰も自分たちを利用できない」ことに安堵するのだが、それでも、利用され続ける生活は終わらない。
--以下ネタバレあり--
最後まで得体の知れないラファームドの目的のために利用され、人生の末を迎えたコンスタントの妻(元ラファームドの妻)が、得た一つの結論、それが冒頭の言葉に続く、以下の結論。
「それはだれにもなにごとにも利用されないことである」
利用され、利用され、利用されつくしてもはや利用する価値もなくなり静かに余生を送る中で、人と人とのつながりの意味―それが「利用」であったとしても―何かをさせられ、することで社会とかかわり、周囲から影響を受け/与え、それにより人として生きていく事を悟る。
己が他人を利用しているつもりだったラファームドも、さらに大きな存在により利用されていただけということが明らかになり、失意のうちに太陽系を去る。
一方で、利用されつくした老女は、静かな悟りを得て旅出つ。
「私を利用してくれてありがとう」と彼女はコンスタントにいった。「たとえ、私が利用されたがらなかったにしても」
そう。私たちは、常に誰かに利用されている。でも、それはそれで良いじゃないか。たとえ利用されているとしても、自分の意思で反応を選択し、行動することはできる。
たとえ損をしているように感じても、利用されていることそれ自体に反発するのではなく、それを超えた何かに向けて前向きに行動することはできるだろう。
そんなことを考えた。
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