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中国沈没 沈才彬 

2008年05月16日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
タイトルから推測されるような、巷に溢れる嫌中国の本ではなく、中国と日本の深いつながりを認識した上で、両国の発展を見つめている著者が、中国の光と闇を書き出した本。
そういう著者をして、このタイトルの本になるところが、中国が抱える問題の大きさを象徴しているともいえる。

それにしても、本書でも書かれている中国国内の問題は酷い。
ダンボール肉まん(著者は、取材はやらせでも事件はあったと考えている)しかり、奴隷工場しかり、一般の日本人の想像を超えた問題が起きている。
一体、この問題はどこから来るのか。問題を貫いているのは、近視眼的な自己中心主義と拝金主義。社会がまだ未成熟ということなのか、文化的なものなのか、それとも全く違う要因によるものなのか。
元々文化レベルの高い国だし、資源外交などを見ていると、非常に戦略的な行動を取る国なのだが・・。どんなに優れた文化的背景を持つ国であっても、社会・政治体制のあり方によっては、簡単に悪いほうに転がってしまう、という見本なのだろうか。

中国沈没―最悪のシナリオ-バブル崩壊で日本経済はこうなる!
--以下ネタバレあり--

今回の四川省の大地震、犠牲者の多さに心が痛むが、中国社会への影響も気になる。
『貧困大国アメリカ』で書かれているように、カトリーナによる災害の後のアメリカ政府の対応策はお粗末なものだった。それに比べたら、聖火ランナーの件で非難もあったにせよ、今回の中国政府は善くやっていると思う。問題は、この後の復興をスムーズに出来るかどうか。
職場を、家を、家族を失った被災者たちに十分な補償をし、再出発できるだけの支援をできるかどうか。この災害が、中国の社会不安の原因にならないと良いのだが・・・


結局のところ、最大のリスクは、政治的な問題につきるようだ。そのトリガーが民主化運動になるのか、株式市場の暴落による暴動になるのか、汚職に対する反発になるのか、インフレによる市民生活の破綻になるのかは判らないが、中国共産党による一党支配体制は、いつ終わってもおかしくない。
それが急激な崩壊になるのか、穏やかな変革になるのかは、著者は触れていない。
何だかんだと言われながら、中国共産党はそれなりにバランスを取っているので、穏やかな変化(著者の言うところの気功療法的改革)で凌いでいく気がするが、油断は出来ない。

いずれにせよ、アメリカを抜いて今や第一の貿易相手国の中国の動向から、好むと好まざるとに関わらず日本は目を離すことが出来ない。

問題があることを認識した上で、隣人として上手く付き合っていく。その方法を考えていかないといけない。互いの「愛国」に辟易することもあるだろうが、そういう五月蝿い外野はスルーして、協力して歩む必要があるのではないだろうか。

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[2008.05.16(Fri) 01:09] 社会Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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メディアに心を蝕まれる子どもたち 有田芳生 

2008年05月08日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
タイトルの通り、TVが代表するメディアが、子どもの心に及ぼしている悪影響についての本。

元々私は、子供をいわゆる「有害情報」から隔離して「無菌培養」するのには反対の考え。隔離したって、見るものは見るし、世の中を綺麗事で済ませるのは間違っていると思うのだけれど。


最近『影響力の武器』などを読んで、ちょっと意見が変わってきている。確かに、ある程度理性が育ってくれば、自分の頭で虚構と現実をしっかり区別したり、世の中の裏表を知った上で、自分の心に従って行動することができる(出来なければならない)けれど、それが育たない段階では、社会の共通認識となる「良心」的なものを刷り込んで、それが安定するまでの期間を置くのも、有りなのではないか、とも考えている。

そんな、良心的な型にはまった人間ばかりで世の中が面白いか、という問題はあるのだけれど、本書で取り上げられている「発砲率」の問題等を考えると、人の良心が都合よく操作されてしまう危険を冒すよりは、あまり問題のなさそうな情報だけにアクセスを絞っておく、というのが妥当なようにも感じる。

メディアに心を蝕まれる子どもたち (角川SSC新書 32)
--以下ネタバレあり--

発砲率というのは、戦争に参加した兵士が、どれ位銃弾を撃ったか、という率。第二次大戦頃までは10%代だったのが、軍によるある種の心理操作・・訓練によって、ベトナム戦争の頃には95%まで向上。最近は、アメリカ軍が提供するゲーム「アーミー・オブ・アメリカ」なんて物も提供されているので、発砲への抵抗はどんどん下がっているのだろう。(アメリカ軍と、その提供するゲームの話は『貧困大国アメリカ』も参照。)

しかし、子供たちを無菌培養するために、メディアに流す情報を「有害」とそうでないものに誰かが判別するというのは、言論の自由の問題もあり難しい。
結局、著者が言うように、テレビ(やネット)を見る時間を減らして、実体験を増やすようにしていくしかないのだろうか。
あるいは、メディアなどから受けたマイナスの影響を、穏当な形で発散させられるような方法を考えるか。それには、大人がもっと子育てに手を掛ける必要があるのだろうけれど、言うは易し、おこなうは難し。。


いずれにせよ、テレビにしろ、ネットにしろ、メディア側がそのメディアの利用を制限するように求めることはありえない。利用しすぎているメディアの有害な側面について、冷静に考えてみるのも、時には必要だろう。
もちろん、本の読みすぎの問題もね。(自戒)

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[2008.05.08(Thu) 20:29] 社会Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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貧困大国アメリカ 堤未果 

2008年04月25日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
貧困大国アメリカ 堤未果

各サイトの書評で好評だったので読んでみたが・・・これは酷い。
市場競争原理を良しとする、アメリカのメンタリティの積み重ねが迎えた、寒く厳しい現実。
あるいは「自由の国」の国民に与えられた「”制約された”自由」の現実。

欧米的なもの、特にアメリカ的なものにプラスのイメージを持ちがちな日本人にとって、アメリカが歩んでいる道を見ることは、自分たちの行く末(になりかねないもの)を見ることでもある。

貧困ゆえに、食費の生活保護である「フードスタンプ」に頼り、手っ取り早い栄養補給のためにジャンクフードばかりを食べる人々。その生活で育って、肥満になる子供たち。給食をだそうにも、そんな予算は無い学校。

危機管理対策の予算削減のために(事実上)民営化し、効率を重視するばかりに遅れる災害対策。
あれだけの被害を出したハリケーン・カトリーナの災害は、数年前から予測されていたという事実。そして、被害者たちに対する国の冷たい扱い。
自由競争、効率性。それがもたらした爪あと。

 「国家が国民に対し責任を持つべきエリアを民営化させては、絶対にいけなかったのです」


世の中には、経済的な効率性では測れないものが存在する。

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)
--以下ネタバレあり--

そして、十分な医療保障がないという問題。海堂尊の著作でも散々言われているように、医療もまた、経済合理性と反する部分がある。医療保険を民間に任せたことで、営利に走る保険会社の手によって、高額な医療費を負担せざるを得なくなる国民。
場合によっては、一度の医療費で、貧困へ転落。

そして、貧困者に待つ「軍隊」という受け皿。
軍もまた、経費節減のために、貧困層の労働力を利用するため、貧困地区に優先的にリクルートをかける。「おちこぼれゼロ法」のことは聞いていたが、軍のリクルートと結びついているとは、不勉強にして知らなかった。
そして、あまい言葉に乗って軍に入っても、求めた学費支援は受けられず、学歴をつむことが出来ない若者。

さらには、その学歴すら陳腐化が激しく、学士であったからといってまともな職にありつけるとは限らない。
そして、職にあぶれた人がたどり着く、「戦場」という職場。

なんとも酷い、負のスパイラル。
もちろん、アメリカ社会にも良い面はあり、負の側面だけに目を向けるのはフェアではないだろうけれど、これだけのマイナスを生んでいるというのは、直視せざるを得ない。

とにかく、読んでみて欲しい。
アメリカ流の自由競争を礼賛する前に、考えるべきことがある。

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[2008.04.25(Fri) 20:05] 社会Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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偽装管理職 

2008年04月22日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
偽装管理職 東京管理職ユニオン監修

これもある意味、課長の教科書。

「管理」職とは名ばかりの、残業代をカットするためだけの「管理職」=「偽装管理職」に就けられ、その待遇を改善するために会社と闘うことを選んだ人たちの記録。
最近では、マクドナルドの店長が、残業代を支払わないのは不当だとして裁判を起こし、勝訴したことが記憶に新しい。

『はじめての課長の教科書』のエントリにも書いたけれど、いわゆる「管理職」と、労働基準法で言うところの「管理監督者」とは、全く違うもの。
でも、大半の企業は、「管理監督者」の基準を満たしていない「管理職」に対し、「管理監督者」と同じルールを適用している。
では、管理監督者とはどういうものなのか? 以下、本書から引用。

労働基準法の解釈によれば、管理監督者とは次のようなものとされる。
 a 自分で自由に出退勤ができる
 b 人事権を持つなど、経営と一体化した立場にある
 c 立場にふさわしい待遇・報酬を得ている


この基準で考えると、係長とか、チームリーダーとかはもちろん、課長だって「管理監督者」ではないことがあるだろう。

偽装管理職
偽装管理職
(また、画像なし・・・)

それにしても、この本に挙げられている例は、とんでもなく悪質なものが多い。
--以下ネタバレあり--

新人をいきなり管理職として現場に放り込んだり、パワハラで散々叩いてみたり。「会社は俺のもの」的な中小企業から、名の知れた大企業まで。コストダウンのための偽装管理職の問題は蔓延している。

そうは言っても、残業代を出していたら、会社がつぶれてしまう?
会社は、社員に甘えすぎだ。 
社員も、会社に尽くしすぎだ。

日本の生産性の高さは、労働者が無給でサービス残業をしたことによる嵩上げが大きかったのでは、という説を聞いたことがあるけれど、サービス残業、管理職の残業代カットの状態を見ていると、その説にも説得力があるのが悲しい。

濡れ手で粟の報酬をよこせとは言わない。それでも、働き手が明るい将来を持てるような、そういう支払いは出来ないものか。。

現実問題として、よほど追い詰められない限り、会社を相手に裁判を起こすことは難しいと思う。さらに裁判のあとも、同じ職場に居続けるというのは、経営層から白眼視される可能性を考えると、とても厳しいだろう。
正直、今いる場所を変えるエネルギーを使うよりは、新しいところに移ったほうが良い、ということもあるだろう。というか、その方が多いかもしれない。

それでも、失われたものを取り戻し、多少なりとも社会を変えるということには価値がある。実際に行動を起こすかはともかく、偽装管理職イエローページなる巻末のリストもあるし、正当な権利を自覚する意味でも、待遇に悩む管理職には読んで欲しい一冊。

・・・・あるいは、管理職を使う立場になろう、という人にも。
待遇が嫌で今の会社を飛び出して、自分で作った会社で「偽装管理職」を拡大再生産してたら目も当てられない。

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[2008.04.22(Tue) 01:18] 社会Trackback(0) | Comments(2) 見る▼
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COMMENT

うーん・・・。 by NED-WLT
「会社は、社員に甘えすぎだ。社員も、会社に尽くしすぎだ。」というのは、鋭いと感じました。

おっしゃるとおり、会社を相手に裁判をするのは、現実には相当難しいですからね。なんとか出来ないものかと思いますが・・・。

by mushi6809
もう一つの選択肢は転職ですが、こちらもそれなりにハードルが高いですし、よほど求人市場が売り手市場でなければ、自浄作用が働くは難しいでしょうね。
それに、大方の企業の求人の大半を占めるであろう学生達が、管理職の扱いへの問題意識を持ってくれる可能性は低いでしょうから、餌に釣られた若者が偽装管理職の落とし穴に嵌るのは減らなさそうな気がします。。

地道に啓蒙活動をするくらいしかないのでしょうかね・・

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ウチのシステムはなぜ使えない 

2008年04月15日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
ウチのシステムはなぜ使えない 岡嶋裕史

あはは。面白い。

本書はSEと同じ土俵で付き合うために、SEが働いている組織や業務手順を理解することを目標としている。

と書いてあるのだけれど、SE業界の内輪ネタが盛りだくさんで、業界の片隅で生きている人間としては、笑わずには読めない。
いやまったく、面白い。

しかし、これだけ笑い話にあふれていると、業界の外の人が読んだら「なんだ、SEってトンでもない連中ばかりなのか」という、根も葉もある誤解を受けそうで怖い。
著者もあとがきで書いているように、大部分の人たちは真面目にやっているのだけれど、真面目=能力ではないし、能力なり労力なりをつぎ込むにしても、つぎ込む方向性が間違っていると、出来上がるものは明後日の方向に向いたシステム。

ウチのシステムはなぜ使えない SEとユーザの失敗学

いや、そもそも何か出来るのならまだ良いのだけれど。。
--以下ネタバレあり--

知り合いの会社では、役員の縁故で発注したシステムが、1年計画のところを、もう6年も開発中。縁故なのでまともに業者を選択したわけでもなく(本書第2章参照)、出来上がってくるものを使わされる現場は、戦線恐々。出来上がってきてないのだけれどね。

工業製品であれば、(特殊なものでない限り)それなりのお金を払って発注すれば、一応ものが出来ることが多いのだけれど、そうは行かないのが、IT業界の怖いところ。

既存のパッケージをカスタマイズするのならともかく、オーダーメイドでシステムを1から作る場合、顧客側は何を望んでいるかをしっかり伝えないと、開発側はそれをしっかり引き出さないと、顧客が望むシステムなんか出来るわけがないのだけれど、実際のところ、顧客が望むものをしっかり引き出すのは難しい。
比較的プロセスが枯れている工学や建築の分野でさえ、顧客の要望を引き出すのは至難の業。自分の望んだように家を建てると、大抵暮らしづらい家が出来てしまうので、専門家のアドバイスを十分に受けないと危険なように、システムも、顧客の望むものを取り入れすぎると、収拾が付かなくなり、「こんなはずじゃなかった」というものが出来てしまう。
そうならないために、利用者の視点と、システムの視点を橋渡しできる、きちんとした専門家が必要なはずなのだけれど、いわゆるSEの大半に、そんなことができるかというと、そうでもなく。。
家具職人、左官職人、現場監督はいても、それを統括して全体としての使いやすくするためのグランドデザインを描ける人って、本当にごく少数。

正直な話、普通に仕事で対面する、いわゆるSEには、そこまでのものを期待するのは難しい。
それでも、なんとか良いものを作ろうとする彼らの力を上手く使うために、過度な期待をせず、かといって、見下すでもなく、ともにシステムを作ろうとする同志として、上手く付き合っていくことはできないものか。

この本は、多少なりとも、その手助けになってくれる・・・のかなぁ?
業界外の人間ではないので、役に立つかどうかの評価は何とも。
ただ、業界の中の人間から見て面白いのは確か。

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[2008.04.15(Tue) 19:09] 社会Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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