影の棲む城 L・M・
ビジョルド『チャリオンの影』につづく、「
五神教シリーズ」第2弾。
『
チャリオンの影』は、昨年に出版された翻訳
ファンタジーの中でも、トップクラスの出来だったと記憶している。
前作の主人公は、ちょっとトウがたった騎士だったけれど、今作の主人公は、前作のヒロインの母にして、現在は女王の母、国太后の未亡人、イスタ。
むむ、著者は、お年がいった主人公がお好きなようだ。
この世界には、五柱の神が存在している。
春の「姫神」。未婚の少女を守護し、学びとさまざまな始まりを司る。
夏の「母神」。親となったすべての女を守護し、健康と医療を司る。
秋の「御子神」。狩と戦いと収穫を司る。
冬の「父神」。親となったすべての男を守護し、正義と安らかな死を司る。
そして、
すべての魔を支配する「庶子神」。孤児や私生児、同性愛者などを守護し、季節によらないすべての災厄を司る。
第5の庶子神は、北方の国々では魔そのものとされて忌み嫌われ、それらの地域では庶子神を除いた「四神教」が信仰されている。
同じ根を持つ宗教ながら、「
五神教」と「四神教」は敵対しあっていて、今作でも、そのあたりの事情が物語に絡んでくる。
これらの神々が、非常に人間世界に「近い」のがこの世界の特徴だろうか。
特に「死の魔術」と呼ばれる奇跡を使うと、誰でも簡単(?)に相手を確実に殺すことが出来たりして、神の魔力が人の世界に近いところにある。
その神といえば、人間が自分たちの存在を勝手に解釈して争っているのに、それを正すことをあまり真剣に行っていないように見える。
いや、行っているのかもしれないけれど、一部の事情しか考慮していなかったり、人の願いをかなえるのに、意地の悪い実現方法を取ってみたり・・・
うん、なんとも
魅力的じゃないか。
これは、そんな神々のいる世界。かつて、神の道具「聖者」として挫折を経験した女性が、新たな人生を求めて旅に出る物語。
ジュヴナイルや、通常のヒロイック
ファンタジー的な物語と今作が違うのは、
--以下ネタバレあり--
なんといっても、主人公の年齢が高いところ。
年齢が高いがゆえに、それまでの人生で経験した挫折が、重みを持ってキャラクターを形作っている。
かつての挫折を糧にして、重い心と体を引きずって前にすすむ主人公に味がある。この辺は、『
チャリオンの影』と通じるところがあり、私の好み。
前作で明かされたとおり、イスタは、王家に掛けられた呪いを解くため、王の愛人にして重臣だったルテス卿を溺死させている。その罪を心に背負い続けていた彼女が、巡礼の旅の先で出会うのは、ルテス卿の遺児と、その異父兄弟。彼らに掛けられた魔法に、再び「聖者」としての力を取り戻した(再び役目を押し付けられた)彼女が立ち向かっていく。
神に毒づきながら、事態に立ち向かっていくイスタが、なんともたくましい。さすがは「おっかさん」って感じ。
そして、今作で深くイスタに関わってくる「庶子神」。
すべての魔をつかさどる者にして、
セクハラ大王(笑)。
いや、困った神だ。彼を嫌う「四神教」の考えもわかるような気がする。まったく、信者は気苦労が耐えないだろう。こういう設定の神、結構好きだけれどね。
舞台設定、キャラクター、そしてストーリー。すべてにおいて楽しめた本。
今年は、このクラスを超える
ファンタジーはどれだけ読めるかな?
さて、あとがき曰く。
さて『チャリオンの影』『影の棲む城』とさほど間をおかずに刊行されてきましたが
・・・・・。
えーっと、一年経ってるんですけれど。それって「さほど間をおかずに」ってことになるのかな?そりゃ、一人でこの文量の本を訳すのは大変だと思うけれど。。
できれば、次の最終巻?も、あまり間を置かずに訳してもらいたいところ。
ぜひぜひ。待ってます。
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