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脱・金融大恐慌1993-2008 松藤民輔 

2008年05月02日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
サブプライム問題を早期に警告した『アメリカ経済終わりの始まり』から始まるシリーズの著者による、15年前の著作の復刻本。
復刻と言っても、単なる復刻ではなく、現在の視点から色々と補足がされていて面白い。

こうして改めてみてみると、「大勢において」著者の予測は当たっているが、完全に外している部分も多い。
さて、これをどう見るか。ニコラス・タレブの言うようなことなのか、それとも、別の要因なのか。

そういえば、著者は3月の金の調整幅は20-40%程度の可能性があると言ってたけれど、実際は10%だったり。
最近も「4/18が大きな転換点になる」と予測したけれど、市場は問題なくスルー。しばらくして「1-2週間遅れて起きる」とフォローしたかと思えば、最近は歴代の暴落は10月に起きている、なんてエントリをしれっと上げてみたりと、結構お茶目(←?)。
もっとも、著者は自分が予測屋だとは一言も言っておらず、予測を外してきたことも公言しているので、外れたことを色々せめるのはお門違いだろう。
(世の中には、3ヶ月周期に従ってこの4月も暴落が起きる、なんって著書に書いてしまった、自称「予言者」さんもいらっしゃるし、それと比べたら遥かにまとも)

脱・金融大恐慌1993-2008

たとえば、著者が大幅に読み違えたことの一つ。
--以下ネタバレあり--

アメリカ経済のITバブルによる株価の上昇は、まったくの予想外。
つまり、テクノロジーのブレイクスルーのタイミングと、それが社会に影響を与える程度を正確に予測することは困難であり、事前の予測は、ある種のブレイクスルーの存在で泡と化す可能性がある。

あらゆる予測には、その前提条件があるはずで、前提条件が狂った場合には、予測を切り替えなければならない。
あるいは、もう一歩進んで「バスカヴィル家の犬」の理論。あるデータから当然起こるべきことが起きなかった場合、そこには、自分が把握できていない「何か」が働いている。その「何か」を突き止めることが大事だったりする。

だから、前提条件をはっきりと把握していない他人の予測に乗っかるのは、非情に危険。
前提が変わったときには、考えをスパッと切り替えて、臆面も無く逆の立場を取るだけの柔軟性が大切。これは、「一貫性」の性質と何ら反するものではないのだけれど、その辺を理解せずに古い見解に固執してしまうと、痛い目を見る。

単にあたりハズレを云々するのではなく、過去に著者がどう考えたのか、その結果どうだったのか、そしてこれからの動きはどうなるのか、いろいろ考えて楽しみたい一冊。

<関連エントリ>
『世界バブル経済終わりの始まり』
『無法バブルマネー終わりの始まり』

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[2008.05.02(Fri) 01:04] 経済Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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サブプライム後に何が起きているのか 

2008年04月24日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
サブプライム後に何が起きているのか 春山昇華

『サブプライム問題とは何か』で、サブプライム問題をわかりやすく解説した著者による続編。
金融業会の動きに始まり、サブプライム関連で有名になった「モノライン」の件はもちろん、最近話題になっている「国富ファンド」や、「イスラム金融」についても触れており、まさに”サブプライム後に何が起きているのか”を判りやすく説明した本。
今作もなかなかお薦め。

金融機関の窮状の話題に始まり、それを立て直す白馬の騎士として登場した国富ファンド、そして金融バブルとそれを支えたモノラインを経由して、金融と日本の未来へと、幅広い話題を明快に説明している。

まさに歴史は繰り返す、という言葉の通り、繰り返されるバブル。繰り返す度に、バブルを支える仕組みは複雑になり、「今度こそ今までと違う」という楽観論、あるいは、複雑すぎて実情が見えないままの楽観的な見通しが、ある日突然崩壊し、どんなバブルも崩壊する、という現実に直面させられる。
債権市場にあふれ返っていたAaa格付け債権の量は、明らかに異常な状態であったのに、それが許されていてしまったのは、手っ取り早く儲けたいという人の欲望が、幅を利かせていたから。

サブプライム後に何が起きているのか (宝島社新書 270) (宝島社新書 270)

本書が、そういう手っ取り早く儲けるという発想とはある意味対極にある、イスラム金融に触れているのは興味深い。
--以下ネタバレあり--

イスラム教は利子の存在を許していない。利子を取るというのは、リスクを低くして苦労をせずに利益だけを得ようとすることであり、それは健全な活動ではない、ということだろう。事業を起こして(リスクを取り)、利益を上げることは許されている。
この制約を回避するために色々な仕組みが生まれているのだけれど、確かにこれだと、バーチャルなマネーがリアルなマネーを遥かに上回る量流通する、という現象は起きないかもしれない。
一方で、バーチャルなマネーの存在が流動性を支えている面もあるだろうから、バーチャルなマネーの存在が小さくなった時に、金融市場がどうなるかは興味深い。

欧米中心の金融界が、オイルマネー等に支えられた国富ファンドや、イスラム金融の登場により、勢力図が少しずつ書き換えられている現在、日本はその中でどういう存在を発揮していくべきだろうか。
少なくとも、「失われた10年」のダメージで、サブプライム債を中心としたゲームに参加できなかった怪我の功名で、さほど大きな影響を受けていない状態は、存在感を発揮していく絶好の機会のはずなのだが、その道筋は見えない。

本書でも書かれているように、リスクをとって動くべきなのだろうけれど、ほどほどに豊かな国内市場に安住して、閉じこもってしまっている日本・・
危機の時こそ大きなチャンスのはず。変化していく世の中で、何ができるだろうか。

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[2008.04.24(Thu) 00:24] 経済Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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投資の科学 

2008年04月03日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
投資の科学 マイケル・J・モーブッシン

投資の世界に関して、科学的な研究を背景に、様々な角度から分析した30のエッセイ。
それぞれ、色々と考えさせられることしきり。

他のすべての事にも共通するのだけれど、以下の文が私にとっては特に大事だ。

結果が重要でないことではない。もちろん結果は重要である。しかし、結果だけに基づいて判断をしてしまうと、正しい意思決定を行ううえで必要なリスクをとりにくくなる。要するに、どのように意思決定がなされたかによって意思決定を評価するべきなのである。

『まぐれ』で書かれていたことにも通じるけれど、世界は偶然に満ちており、確実なものは存在しない。
たとえ、どんなに(大数の法則に照らせば)適切なことをしていたとしても、運悪く結果を出せないことはあるし、どんなに間違ったことをしていても、運よく結果に恵まれることはある。
大切なのは結果そのものでなく、結果を出すためのプロセスを、いかに適切に行ったか、ということ。短期の結果に注目すれば、正しい意思決定が、プラスの結果を出さない可能性は十分にある。長期の成果に目をむけ、そのための正しいプロセスを見につけることで、成功〜成長と読み替えて良い〜が得られる。
・・・そういう意味で、世の中にはびこっている「成果主義」は、かなり問題があるシステムともいえる。

投資の科学 あなたが知らないマーケットの不思議な振る舞い

とまあ、私の心に残ったこの部分は本書のさわり。
--以下ネタバレあり--

投資の哲学、投資の心理学、イノベーションと競争戦略、科学と複雑系理論、というように、次々と異なる視点のエッセイが展開され、読んでいて飽きないだけではなく、得られる示唆も多い。

一般に用いられることが多い「株価収益率」を指標にすることの無意味さなんかは、しらないと初心者が陥りがちな点かもしれない。でも、本書が「株価収益率は無意味」という浅い論点にとどまらず、それが無意味になる理由を説明して、その理由のほうにこそ注目すべき、といしていることだろう。そうやって個々の数値の意味だけでなく、それが影響を受ける外部の要因を意識して分析をすることで、より対極的な視野が得られるし、ある指標について「それが有効な場合」を考えることが出来るようになる。

章の数が多いので、さわりだけになってしまったり、(多分私の理解が足りないせいで)ちょっと牽強付会に感じる部分もあったりするけれど、そこは自分で広げていくことで、より長く楽しめる本になりそうだ。

具体的な戦略を書いているわけではないので、直接的な成果を期待する向きには物足りないかもしれないけれど、投資の世界について色々と新しく、有意義な視点を与えてくれる良書。

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[2008.04.03(Thu) 20:15] 経済Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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黄金の扉を開ける 賢者の海外投資術 

2008年03月18日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
黄金の扉を開ける 賢者の海外投資術 橘玲

個人的にいつも楽しみな橘玲。近作は、最近になく過激。

序章 さよなら、プライベートバンカー
第1章 究極の投資Vs至高の投資
第2章 誰もがジム=ロジャーズになれる日
第3章 ミセス・ワタナベの冒険
第4章 革命としてのヘッジファンド
第5章 タックスヘイヴンの神話と現実
第6章 人生設計としての海外投資
終章 億万長者になるなんて簡単だ



とくに第1章の「究極の投資」の件はすごい。

「コネも才能も運もなく、たいした貯金もないごく普通のサラリーマンがお金持ちになるにはどうすればいいんでしょう?」
私はいつも、「だったらリスクを取るしかないんじゃないですか」とこたえていたのだが、今ひとつ理解してもらえなかった。


いや、確かにその通りなんだけれど、8倍のレバレッジというのは、さすがに抵抗が。。どこまでが真剣なのか、どこまでが「ナイナイづくしでリスクすらとろうとしない人に対する喝」なのか判らないけれど。

過激な手法はともかく、投資の資産配分を考える上で、自分自身を債権と考える発想は面白い。
「投資資金がない若者は、自己投資をして給料を稼ぐのが一番効率が良い投資だ」という話は目にするけれど、自分自身を日本円建てのバーチャルな資産と考えて、最大の資産を日本円で運用しているのだから、リアルな金融資産はすべて海外投資に向けるべきだ、という発想は、目からウロコ。

黄金の扉を開ける賢者の海外投資術

確かに、そう考えれば海外に投資するのが自然に思える。
--以下ネタバレあり--

そこまで深く考えずに、資金全額を海外投資にぶち込んでいる(おい)私としては、なかなか頼もしい発想だ。

もっとも、リスクを取るばかりで、リスクマネジメントを心がけないと、あっという間に丸裸になるから、この本を読んで実践しようという人は、注意が必要。昔、3日で資金の3割を吹き飛ばした人間が言うのだから、間違いない(苦笑)。リスクマネジメントについては、次回作の『実践編』で書かれるんだろうか?

これ以降の章も、読みどころが沢山。
最近流行しているFXの話や、新興国の市場に一番乗りして講座を開いたエピソード、タックスヘイブンの話なんかも面白い。さすが、この手のネタを語らせると、著者の引き出しの豊富さと、目の付け所の鋭さ(ちょっとダークさ?)が光っている。
亡国のミス・ワタナベの話なんかは、シュールでなんとも面白い。

・・・・このところ原油はバブル。海外市場は落ちる一方だし、これからは日本経済が良くなる!と声高に叫んでいる人たちもいるので、海外への投資も少し敷居が高いかもしれないけれど、こういうときこそが面白い。
橘玲好きはもちろん、そうでなくても、これから先投資を考えるのであれば読んでおいて損は無い一冊。

・・でも、実践は慎重に。

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[2008.03.18(Tue) 01:53] 経済Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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メタル・ウォーズ 

2008年02月27日 ()
最近読んだ本 * 本・雑誌
メタル・ウォーズ 谷口正次

これから本当に問題になるのは、今ニュースで目についている原油価格ではなく、金属資源の不足である。
そのことを各方面から語った本。

以前取り上げた『レアメタル・パニック』は、実際にレアメタルを取り扱ってきた現場の商社員が書いた本だったけれど、こちらはジャーナリストの手による一冊。
ジャーナリストらしく話は各方面に渡り、金属資源の採掘による環境破壊の問題や、資源を巡る欲望剥き出しの争いにも踏み込んでいて、読み応えがある。

序章 生き返った恐竜―資源メジャーと喰らいつく中国
第1章 世界で囲い込みに狂奔する中国
第2章 メタル資源メジャーの実力
第3章 メタル資源開発の闇―Out of sight, out of mind
第4章 飢餓を呼ぶ世界のメタル消費
第5章 どうする?日本―歴史上三度目の資源危機


この問題で、やっぱり主に取り上げざるを得ないのは、中国の動き。効率の悪い資源の大量消費国であり、様々な資源の最大の算出国でもある。
アフリカ各国に盛んに手を伸ばして、経済援助と見返りに資源を手に入れているという話は良く聞くけれど、この本の情報による限り、必ずしも上手くは行っていないようだ。
他の先進国が、発展途上国の国民に対して無茶な労働条件を押し付けるのは、ダブルスタンダードを使って途上国から搾取しようとしていると考えられるのだけれど、中国の場合、どうもダブルスタンダードではなく、それが悪いことと思わず、無茶なチャイニーズスタンダードを導入しているだけ、の様なのがちょっと怖い。
それでも、あまり上手く行ってなかったとしても全体量の多さから、圧倒的に日本よりも資源の供給で上手く振舞っているのは確かな様だ。

メタル・ウォーズ
こういう状況で、日本は一体どうしていくのか。
--以下ネタバレあり--

廃棄された製品から金属資源を取り出す都市鉱山や、海洋資源など、今は採算が取れていなくても、今までとは違った資源の調達方法を研究していく必要がありそうだが、本書によると、都市鉱山の話も、行政の縦割りに阻まれて、上手くいっていないらしい。
色々と問題はあるのだろうけれど、きちっとした戦略に基づいた行動を行政には本当にお願いしたい。

そうそう。本書でも取り上げられているネプチューン社は、日本の経済水域内での採掘試験の申請をしているらしい。
Neptune makes strategic applications in Japan and PNG(Neptune Minerals) :2007/02/21

・・今年1月末の日経新聞(紙面)で取り上げられていたみたいだけれど、申請から1年経っても動きがないって事は、申請が通らなかったんだろうか。


都市鉱山、海洋資源の話も面白いのだけれど、個人的には「バイオマイニング」の話に一番興味を引かれた。
このバイオマイニング、金属を食べる微生物を使って、今まで採取できなかった資源を濃縮して採取する、という技術。
バイオテクノロジーなので、未知の危険な微生物を作ってしまい、鉱工業が生む新しい環境破壊になる可能性もあるけれど、微生物で資源を集めるっていうところに夢がある。
この辺は、日本の企業も取り組んでいるようなので、頑張って欲しいところ。

<参考リンク>
慶應義塾大学先端生命科学研究所とバイオテクノロジー研究開発会社  「バイオシグマ社」の共同研究契約の締結について(日鉱金属株式会社)


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[2008.02.27(Wed) 19:20] 経済Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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