投資の科学 マイケル・J・モーブッシン
投資の世界に関して、科学的な研究を背景に、様々な角度から分析した30のエッセイ。
それぞれ、色々と考えさせられることしきり。
他のすべての事にも共通するのだけれど、以下の文が私にとっては特に大事だ。
結果が重要でないことではない。もちろん結果は重要である。しかし、結果だけに基づいて判断をしてしまうと、正しい意思決定を行ううえで必要なリスクをとりにくくなる。要するに、どのように意思決定がなされたかによって意思決定を評価するべきなのである。
『まぐれ』で書かれていたことにも通じるけれど、世界は偶然に満ちており、確実なものは存在しない。
たとえ、どんなに(大数の法則に照らせば)適切なことをしていたとしても、運悪く結果を出せないことはあるし、どんなに間違ったことをしていても、運よく結果に恵まれることはある。
大切なのは結果そのものでなく、結果を出すためのプロセスを、いかに適切に行ったか、ということ。短期の結果に注目すれば、正しい意思決定が、プラスの結果を出さない可能性は十分にある。長期の成果に目をむけ、そのための正しいプロセスを見につけることで、成功〜成長と読み替えて良い〜が得られる。
・・・そういう意味で、世の中にはびこっている「成果主義」は、かなり問題があるシステムともいえる。

とまあ、私の心に残ったこの部分は本書のさわり。
--以下ネタバレあり--
投資の哲学、投資の心理学、イノベーションと競争戦略、科学と複雑系理論、というように、次々と異なる視点のエッセイが展開され、読んでいて飽きないだけではなく、得られる示唆も多い。
一般に用いられることが多い「株価収益率」を指標にすることの無意味さなんかは、しらないと初心者が陥りがちな点かもしれない。でも、本書が「株価収益率は無意味」という浅い論点にとどまらず、それが無意味になる理由を説明して、その理由のほうにこそ注目すべき、といしていることだろう。そうやって個々の数値の意味だけでなく、それが影響を受ける外部の要因を意識して分析をすることで、より対極的な視野が得られるし、ある指標について「それが有効な場合」を考えることが出来るようになる。
章の数が多いので、さわりだけになってしまったり、(多分私の理解が足りないせいで)ちょっと牽強付会に感じる部分もあったりするけれど、そこは自分で広げていくことで、より長く楽しめる本になりそうだ。
具体的な戦略を書いているわけではないので、直接的な成果を期待する向きには物足りないかもしれないけれど、投資の世界について色々と新しく、有意義な視点を与えてくれる良書。
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