スティーブ・ジョブズ-偶像復活 ジェフリー・S・ヤング
今や、テクノロジー界の押しも押されもせぬカリスマとなったスティーブ・ジョブズ。「現実歪曲フィールド」の使い手にして、数々の神話を持つ彼の誕生から挫折、復活と今に至るまでを、丹念に追いかけた力作。
ちょうど、昨日からMacWorldが始まり、IT系のニュースは、MacWorld一色。毎回、ジョブズの基調講演は驚かせてくれるニュースとともに、彼のカリスマ性が光っていて圧倒的な支持を得ている。彼の基調講演を批判する文章って、ほとんど見たことが無い気がする。
そんなカリスマの真実を、周囲の声を基に書いているのだが、この本から受けるジョブズの印象は・・・・
・身勝手
・思い込みが激しい
・攻撃的
・神経質・・・・・。
一体どこの性格破綻者?
この部分だけ切り取ると、とても魅力的には見えないのだけれど。そこが、カリスマ性、というものの不思議なところ。

なぜ、人は人を惹きつけるんだろう。それも、時に圧倒的な力で。
身近でも、人を惹きつける魅力がある人って、どこか"飛びぬけて"いて、どこか"極端な”人が多い気がする。自分たちが持っていない、外向きの圧倒的なエネルギー。そういうものが人を惹き付けるのだろうか。
もちろん、ジョブズの場合、単なるカリスマ性だけでなく、定評のあるセンスやビジョナリーとしての魅力がある。
アップル製品のセンスの良さは否定の要素がない。最近でも、iPhoneはあまりに魅力的で、比較的デザインにこだわらない私も、思わず「格好いい・・・」と思ってしまったくらい。
でも、シンプルさを追い求めるあまり極端に走りすぎて、周囲の人が苦労して方向修正したり、と必ずしも最善な選択をしているわけでもないらしい。
ビジョナリーとしての側面は、今までに多くの失敗をしてきたことが、この本を見ているとわかる。Lisaしかり、NeXTしかり、(意外なことに)Pixerしかり。
それでも、最終的には運に恵まれて、復活を成し遂げ、今のスティーブ・ジョブズになっている。
完璧というのは程遠い。一緒に仕事をしていたら、間違いなくストレスがたまりそうな、正直友人としてもどうかと思ってしまう人物。でも、圧倒的な魅力で周囲の人を惹き付け、ユーザーを熱狂させてやまない、不思議な人物。
こういうカリスマ性にあふれた人物を見ていると、中庸とか、善良とか、いわゆる良い人って一体何なんだろう、と思ってしまう。人の世は、奥が深い。
こういう成功したカリスマの話って、美談に彩られていたり、彼のビジョンが常に正しい良いうに祭り上げられてしまうのだけれど、数々の失敗と、それにまつわる話が書かれていて、本書は興味深い。そう、快進撃を続けるアップルとジョブズも、常に正しいわけではない。
彼が言うと、全て正しいように聞こえてしまうけれど、読み間違いは多々ある。でも、さりげない軌道修正で、都合の悪いことはいつの間にか消えてしまうのはさすが、というべきか。
この本のジョブズ像に照らして言うなら、「ジョブズは常に正しい。なぜなら、正しいことが彼の意見だからだ」ということになるだろうか。
まったく、カリスマっていうのは不思議な・・(略)
iPod、iTunes、iPhoneを擁するアップルは、今も快進撃の真っ最中。iTunesはAmazonの追撃が始まり、Apple TVは飛び立つに至っていないみたいだけれど、今回のHDビデオダウンロードで、その状況も変化するのか。
iPhoneの日本登場も遠くない将来にあるだろうし、まだ、しばらくアップルとジョブズからは目が離せそうにない。