影響力の武器 ロバート・B・チャルディーニ
一定のテクニックを使われることで、気が付かないうちに、相手の思うように操られてしまう。
実際に使用されている、そんな危険なテクニックの数々を分析して、騙されない・操られない方法や、テクニックを生かして人を説得する方法を書いた良書。
この本、よくお薦めの本として上がっているのを見かけていたんだけれど、読む機会が無かったけれど、ようやく購入。ちなみに、『
初めての課長の教科書』の
著者によるセレクションにも上げられている。
内容は、確かに、勧められるだけのことはあってすごい。
たとえば、「ギブ・アンド・テーク」の裏側にある力。何かをもらってしまうと、それに対し(時には過剰に)何かを返さざるを得なくなる
<返報性>。生保のおばちゃんのプレゼント攻勢は、これの良い例。
この力が働く原因は、社会的に適応するためだ、と説明している。どの社会でも、受けた恩を返さない”恩知らず”は非情に強く非難されるため、受けたものに対して何かを返そうとする動機付けが強く働くように、我々は、条件付けられてしまっているという。
![影響力の武器[第二版]](http://images-jp.amazon.com/images/P/4414304164.09.TZZZZZZZ.jpg)
この性質で面白いのは、受け取ったものと返すものの間に、返すものの価値 >> 受け取ったものの価値という場合でも、強力な力を発揮する点。
確かに、どうでもいいお菓子とかで客をつなぐ生保のおばちゃんの攻勢に負けて、一生で数百万円の支払いをさせられてしまったり、何度も食事をおごられた女性が、関係を迫られて流されてしまったり。いろいろな場面で、強力には働いている。
「みんなやっている」ことを、無意識のうちに選択してしまうことを利用した、<社会的証明>。
良くわからないときは、大勢に従うのが効率的、という人間の、いや、おそらくすべての生物が持っているだろう反応のシステムを利用した方法。特に自分と似た人の行動に左右される、というのは自分と似た相手にとって良い事なら、自分にとっても良い可能性が高いだろうから、確かに効率的な反応。無責任だけれど、人間って良く出来ているな、と感心する。
他にも、好意には好意を返してしまう事を利用する、<好意>や、盲目的に従おうとする人の本能を利用した、<権威>など、いろいろな影響力について、事例を元に紹介されていて面白い。
そうそう。
本書を読んでいて思い出したこと。
私が小さい頃。当時は、不動産の価格が順調に上昇していた時代。両親は、小さな家を買い、それが値上がりしたら売って少し大きな家に買い換えて、ということをしようとしたのだけれど・・・これが上手くいかず。元の家が売れることを期待して新しい家を買ったのだけれど、数ヶ月元の家の買い手が現れず、新しい家に引っ越す日になっても元の家が売れない、と困った状態になった。
さあ困った。このままでは、新しい家のローンが払えないし、親戚に借りた頭金も返せない。なんとか売り払うために、不動産屋に、売値を下げることを勧められた。そこで父がしたことは・・・・売値を上げること。そうしたら、その週のうちに買い手がついて、無事に売り払うことが出来た、って話。
これは、この本の中で、値段が高いものは良いものだ、という自動的な反応として紹介されている現象。
父いわく、「値段が高いほうが、価値があるように見えるから」と。不動産屋には大反対されたそうだけれど、結果的には、父の判断が正しかったし、この本で分析されているように、ある程度の裏づけがある。
本当に、人間の反応って、面白い。
本書のユニークなところは、こういうテクニックを使って相手を操れ!というイカガワシイハウツー本ではなく、これらのテクニックから身を守る方法が挙げられているところ。
人間の反応に対する研究はどんどん進んでいて、これらのテクニックを悪用する人も増えてくるだろう。実際に、テレビ番組等でも、多用されているらしい。これらのテクニックのタチが悪いのは、影響を受けたことに気づかず、自分の行動は自分の意思だと考えて、被害を受けたと思うことすらない、というところ。
こういうテクニックが存在することを知り、自分の行動を本当に自分で選択するために、必読の本ではないだろうか。