マルドゥック・ヴェロシティ
沖方丁マルドゥック・スクランブル(以下スクランブル)以前、敵役の一人、ボイルドの転落とウフコックとの決別を描いた物語。
物語は、スクランブルでバロットが尋ねた研究所から始まる。
軍の研究所で廃棄される寸前だった実験体のメンバー達は、3博士の一人クリストファーとイースターと共に研究所を出て、マルドゥック・スクランブル09(オーナイン)を設立する。
あのスクランブルの時点では、既にボイルドとウフコック、イースターだけになっていたスクランブル09だが、この物語で設立された時点では、9人と2匹の大所帯。
新しい環境に適応して生きがいを見つけていく彼らだが、やがて、敵が牙を剥きはじめ、一人、また一人とメンバーが脱落していく。
スクランブル09に敵対する傭兵集団カトル・カールの改造人間達が、ちょっとやり過ぎだろ、ってくらい壊れている。手から糞便を撒き散らす巨大な赤ん坊とか、ゴキブリ姿の男とか、巨大な角に張型を付けたトナカイとか・・
こんな奴らと戦わされる09のメンバがーが可哀想だ(苦笑)
そんなスパイスはともかく、比較的穏やかだった序盤から中盤、ちょっと平穏な場面を挟んだ後で、物語は音を立てて奈落へと転落していく。次第に、過去のフラッシュバックに侵されていくボイルド。信頼しあっていた仲間は次々に脱落していく。
09のメンバーは、皆個性的で施されている改造も面白いのだが、盲目のクルツと軍用犬のオセロットのペアが良い味を出している。
裏切ったクルツに手を下したオセロットの悲しみと、静かに死に臨む姿が印象的だった。最後の一吼えが泣かせてくれた。
次々と仲間が倒れていく中、09の乗っ取りを防ぐために、ボイルドは仲間の死体を隠蔽し、信頼関係にあった刑事も失い、ウフコックとも決別。
このウフコックと決別した事件は、スクランブルで”関係者を皆殺しにした”とボイルドの狂気として書かれていたものだが、ボイルド視点で見ると全然事情が違う物語。
孤独に転落していくボイルドの悲しい狂気だけが心に残る。
バロットに倒された時に、ボイルドの虚無は満たされたのだろうか。
そう信じたい。