アヘン王国潜入記 高野秀行
麻薬の産地として有名な黄金の三角地帯の一角に単身潜入し、そこでの生活をつづったルポ。
こうかくとちょっとオドロオドロしい内容と、表紙の現地人の、白い歯もまぶしいにこやかな笑顔〜バックに広がるケシ畑!〜とのギャップからして面白そうな予感。

著者が入り込んだのはビルマ(ミャンマー)北部のワ州。
・反政府ゲリラが支配する地域の一角にある、のどかな村(でも、もとは首狩り族)。
・マラリアなんて存在しない(知らないだけ)。
・原始共産制の助け合い社会(でもアヘンの収穫後には虚虚実実の駆け引きが)。
・世界は、ビルマとタイ、ワ州、中国しかない。(日本は"水"中国らしい)
さまざまなギャップを体験しながら過ごす著者の生活がとても面白い。
のどかでたくましい村人たちとの生活は(傍で見ている限り)とても魅力的。
この著者、さんざん村での暮らしを堪能?したあげく、
アヘン中毒になってるし。。。いいのかこれ??
海外でのことだから、日本に帰ってきても犯罪にはならないんだよね?多分。
その一方で、たんなるドタバタには終わらず、この地域が抱える問題に対する考察・洞察も興味深い。ゲリラがアヘンを資金源にしている理由は、
他所のサイトの最近の記事「
ビルマのケシ栽培削減に対する国連の評価は間違い」によると
軍事政権は自立政策を取っているため、各部隊は自らの出費を賄うため収入を得なければならず、そのために麻薬取引を行っているという。
というのは、本書で著者が触れているのと全く同じ。
人は、それぞれがおかれた仕組みの中で、最大の利益を上げようとする。
仕組みが変わらない限り、人の行動は変わらない。
最近では、
タイ側の転作の話は聞くし、近所の店でも、ドイゥンのナッツ(辛かった・・)が売っている。
Wikipediaの記事によると、黄金の三角地帯は
最近では治安もよくなり観光客も立ち入れるようになっている。
ということだが、全体的な状況はあまり変わっていないのか。
ビルマ側が変わっていないだけなのか?
第7章で取り上げている、アメリカ軍発表の数字の話も興味深い。
所詮、すべては政治の都合ということなのだろうか。
本書で、著者は「アヘンの(医療用)ヘロイン化計画」をぶち上げて反政府ゲリラに提案しているのだが、最近になっても、黄金の三角地帯が医療用のヘロインの産地になっているという話は聞かないから、著者が提案したヘロイン化計画は、受け入れられなかったらしい。
一挙両得の素晴らしい案だっただけに、残念。
カルチャーショックを味わえる一方で、歪んだ社会が持っているさまざまな問題点も見せてくれる良書。