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パンドラ 

2008年02月20日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
パンドラ 谷甲州

世界中で起きる動物の「異常行動」。
突如、高い知能を得た動物が、組織的に狩りを行うようになり、雑多な種類の猿の群れが、村を襲撃して壊滅させる。
世界で、一体何が起こっているのか?人類は、一体どうなってしまうのか?
動物生態学者の朝倉は、動物の異常行動を研究するために派遣されたマレーシアで、人類と、知性を増した動物たちとの戦いに巻き込まれる。
それは、もっと大きな事件の始まりでしかなかった。

パンドラ1 (ハヤカワ文庫 JA タ 4-22)パンドラ2 (ハヤカワ文庫 JA タ 4-23)



ところで、2巻目の解説で3巻以降の話を書いてしまうのは、ちょっといかがなものかと思う。
もう少し、先が見えない読者に対する気配りがあっても良いのでは。
--以下ネタバレあり--

多くのSFがそうなのだが、この作品も人間同士の争いが描かれている。

ようやく明らかになった人類の脅威そっちのけで、エゴ剥き出しで壮絶な足の引っ張りあいを始める各国。ご他聞にもれず、敵になるのは共産圏の某国。まあ、お約束なのだけれど、あちらの国の物語だと、この辺の争いはどういう書かれ方をするんだろうか。
堕落しきった、無秩序な民主国家に対して、誇り高い人民が誘惑を撥ね退け、高い士気と英雄的献身で戦いを挑んで勝利する物語になるんだろうか。うーん。
一体どんなものになるのか、読んでみたい気も(少し)する。

パンドラ3 (ハヤカワ文庫 JA タ 4-24)パンドラ4 (ハヤカワ文庫 JA タ 4-25)


その争いの舞台になる、パンドラ2へ向かう航宙機の描写は面白い、緊迫感はありながら、ものすごく広い空間を、長いタイムスパンで動く航宙機同士の戦闘は、なんとも独特な感じ。確かに、十分な推進剤のない宇宙空間での戦闘であれば、あんな感じになるのだろう。

最後に登場したパンドラからの存在が、最後の敵としてはやや脆弱だったのは、しかたないところなのか。
結局彼らは自分達が快適に暮らせるようにするために地球環境を改変しなければ生きられなかったのだし、そのための道具として、現地の生物を使う必要があったのだから、自身には、地球の生態系に切り込んで行って生き抜くだけの強靭な生命力は無い、と。
それはそれで自然なのだけれど、少し物足りなかったなぁ。。

作品が終わっても、明るい未来はやってこない。まだまだ、人類とパンドラからの存在との戦いはこれから。不安を残し、それでも、人類は現在の世界を続けていく。
切り捨てた可能性は、バラ色の未来か、単なる幻か。人は今の形を捨て、新しい進化のステージを進むべきではないのか。今ある人としての形を捨て、新たなステージを進もうとするのは、間違っているのだろうか?そんなことを考えてみるのも面白い。

科学面の描写も細かくされて、読み応えのある一冊。

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[2008.02.20(Wed) 00:06] SFTrackback(0) | Comments(0) 見る▼
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太陽の簒奪者 

2008年01月22日 ()
最近読んだ本 * 本・雑誌
太陽の簒奪者 野尻抱介

突如、太陽の周囲に生成され始めたリングにより、日照を奪われた地球。
氷河期へと転落していく地球環境によって絶滅に追い込まれた人類はリングを破壊すべく、宇宙艦を派遣する。

宇宙艦のクルーとして選ばれた女性科学者と、クルー、そしてリングを生成した謎の存在との物語。

日本のSF作家として、比較的注目度の高い著者による、ハードSF。野尻抱介というと、ロケットガールや、クレギオンという比較的ライトなSFがイメージにあるけれど、この作品はかなりハードな一作。最初の出版から結構年月がたっているけれど、しっかり色あせない良さを見せている。
(ロケットガールは未読なので、題名からライトだと思っている。さほどライトでもない?)
太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

物語の中で提示される数々の謎が、納得のいく流れで「そうだったのか!」と解消されるのが心地良い。
--以下ネタバレあり--

突如発生した謎のリングと、その生成過程。
明かされるリングの機能。そして、その役割と、ビルダー(リングの建設者)の存在。
一向に現れないビルダーと、その動向。
・・・・コミュニケーションを拒否するビルダーと、その正体。
そして、最後に明かされる一つの真実。

テンポ良くリズムを刻んで物語が展開し、内容もしっかりしているので、全く飽きさせない。


ところで、本作の最後に、なぜかコラムがついている。
書いている人は・・・谷川流。『涼宮ハルヒ』シリーズの著者。なぜ、この人がこんなところにコラムを。。。
コラムの中で、ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』と比較しているけれど、確かに、この作品には、同じ感覚の良さがある。
ハードSFとは言いながら、読みやすさと面白さも併せ持った良作。

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[2008.01.22(Tue) 20:11] SFTrackback(0) | Comments(0) 見る▼
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われはロボット 

2007年12月18日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
われはロボット アイザック・アシモフ

作品(集)自体よりも、巻頭に書かれたロボット三原則があまりにも有名。

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
     また、その危害を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
     ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、
     自己をまもらなければならない。


多分、どこかで目にしたり聞いたことがあるだろう。ロボット関係の話題は、この三原則抜きには語れない。

この本は、三原則に絡んだ色々なジレンマにはまってしまったロボットと人間の話を中心にした短編集。
有名なのに、実は読んだことが無かった。

われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)
--以下ネタバレあり--

個々の短編自体も面白いのだけれど、話の語り手として設定されている「ロボット心理学者」の役割が面白い。ロボットは複雑になりすぎ、専門の心理学者が必要になる位の存在になっているということだ。

実世界では、つい最近ASIMOが複数台で協調動作をするというニュースが出ていた。

ASIMO、実社会へ一歩踏み出す〜複数台による協調動作を公開(Robot Watch)

残念ながら、個々の独立した個体が自分の判断で協調行動するのではなく、本書の「野うさぎを追って」の様に、全体の一部としてサーバの指示の下で行動する様だ。
・・・知能化技術と言っているようだが、これって「知能化」なのか?
まあ、どんどん性能は向上しているみたいだから先が楽しみは確かなのだけれど、対話するのに専門の心理学者が必要になるような自律した個体として行動できるようになるのは、まだ夢の中の話なんだろうな・・・

閑話休題。
収録されていた中では、「われ、おもうゆえに・・・・・・」と、「証拠」が個人的に好み。
「われ、おもうゆえに・・・・・・」は論理的に全く間違っていないのだけれど、誤った前提に立った結果破綻してしまっているブラックユーモアな話。
キューティが主張する話は、「たしかに・・・」とうなずいてしまう部分もあり、面白い。超越者ならぬ、脆弱者(?)を想定した伝説の体型って存在していないから、そういうのを構築してみたら面白いかもしれない、、、夢が無くて、受けないだろうけれど(笑)

「証拠」は、種明かし(?)が見事。そこから始まる信頼関係が、なかなか味がある。


個人とロボットのかかわりから、ロボットと人間社会の関わりまで、広く題材を取って書かれた、さすがに名作といわれるだけの短編集。ロボットネタに触れる機会があったら、一度は読んでおくのが良いだろう。

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[2007.12.18(Tue) 20:25] SFTrackback(0) | Comments(0) 見る▼
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遺跡の声 堀晃 

2007年11月30日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
遺跡の声 堀晃

銀河系の辺境に散らばる滅びた文明の遺跡の調査員である主人公と、結晶生命体の物語。
独特の雰囲気を持った作品。

私が読んだ中では、この作品に似た雰囲気を持ったものはなかったと思う。
遺跡の調査といえば最近では『ニュートンズ・ウェイク』もそうだったけれど、あちらはあくまで超テクノロジーの探索で、かつ、前向きなヒロインが物語を引っ張っている。

こちらは、人類世界にとって得るものが少ない辺境の滅びた文明の遺跡に対して淡々と仕事を続ける主人公であり、彼には未知の過去に対するロマンがあるわけでもない。
全体に漂う、すこし荒涼とした寂寥感。それが独特の作風を生み出している。

遺跡の声 (創元SF文庫 ほ 1-2)
遺跡の声 (創元SF文庫 ほ 1-2)

・・文庫は最近なのに、画像がないのは何故だろう。

--以下ネタバレあり--

未知へのロマンがないなんて書いたが、もちろん、それは主人公がそういう気持ちを持っていないだけで、読者に対しては未知の世界の不思議を味あわせてくれる。

直径数キロメートルの巨大な太陽ヨット。
赤道部に巨大な流砂の帯を持つ惑星。
どこまでも滑らかな、花崗岩のような岩地に覆われた惑星。

作中で描写される人知を超えた巨大な遺跡たちは、想像力を書きたてて、そんなものに接しても、淡々と職務をこなす醒めた主人公とのコントラストが良い。

ラストは、唐突ながら、ある意味この作品らしくて納得。
このラストから先に書かれた、っていうのは少々驚きだ。

好みは分かれそうだが、ともかく、独特の雰囲気を持った作品。

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[2007.11.30(Fri) 21:28] SFTrackback(0) | Comments(0) 見る▼
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内なる宇宙 ジェイムズ・P・ホーガン 

2007年11月28日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
内なる宇宙 ジェイムズ・P・ホーガン

『星を継ぐもの』から始まる4部作の第4部。
今作は今までの作品とは少し毛色を変えて、ジェイムズ・P・ホーガン流のファンタジー。

登場するのはおなじみのメンバー、舞台はお馴染みの世界。
ジェヴレン人との戦争がハントらの活躍により終了し、ジェヴレンはテューリアンによる占領状態にある。
ジェヴレン人たちは、前作で提示されたような完全なバーチャルリアリティによる世界に依存してしまっており、そのサービスが停止されたことで、社会情勢が不安定になっている。
テューリアン(とガニメアン)には理解できない要因で不安定になっているジェヴレン人社会の問題を解決するため、ハントらは再びテューリアンの世界へ向かう。

内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)
内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)
--以下ネタバレあり--

今作の主要な舞台の一つになっているエントヴァース成立に至る理論については、いまひとつ理解しきれなかった。
情報素子がエントヴァース宇宙の基本構成要素になるという部分は、ちょっと理屈が複雑すぎる(言い方を変えれば無理がある)。
とはいえ、物語としては十分面白い。

話のネタを書いてしまうと、エントヴァースは惑星サイズの超巨大コンピュータ内に誕生した、別の世界。その中で誕生した情報生命体たちが現実世界へと侵略しようとしているわけだが、この作品では、情報生命体たちに権利を認めている。
この作品では、生命=記憶+論理と解釈していて、エントヴァースに転送されたハントたちのコピーも、もう一人の人間であり、尊重されるべき存在としている。
この辺は、グレッグ・イーガンの世界感に近い。
最近のSFはそういう世界感(生命は記憶+論理でありコピーできる)のものが多いけれど、『老人と宇宙』は、それ以外の存在をほのめかす記述があるし、『キルン・ピープル』は霊子工学っていう位だから、霊的なものの存在を肯定している。
そういえば、ついに皮膚から万能細胞を生成することに成功したようだし、現実世界でもクローンの問題を真剣に考えるときが近づいているのかもしれない。
・・・まあ、数10年から100年オーダー先の話かもしれないが。AIによる侵略なんて、残念なことに(?)当分先だろうなぁ。


このシリーズでは、地球の歴史の背景をシリーズの世界観で上手く説明するところも面白いのだが、今作のエントバースは、ひねりすぎてしまって失敗している気がする。
魔法が普通に存在しているというのはともかく、エントバースの特徴である、物体の大きさが変わるという部分は、まったく神話に登場していないから。世界の特徴として面白いと考えて作ったのだろうけれど、この部分には無理があったのではないか。

シリーズのこれまでとはちょっと毛色が違った作品だったが、それなりに楽しめるのは確か。
すっかりジョーク好きなアメリカの兄ちゃんと化しているAIのゾラックとか、いつの間にかソ連が崩壊しているのはご愛嬌。

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[2007.11.28(Wed) 20:14] SFTrackback(0) | Comments(0) 見る▼
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