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メディアに心を蝕まれる子どもたち 有田芳生 

2008年05月08日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
タイトルの通り、TVが代表するメディアが、子どもの心に及ぼしている悪影響についての本。

元々私は、子供をいわゆる「有害情報」から隔離して「無菌培養」するのには反対の考え。隔離したって、見るものは見るし、世の中を綺麗事で済ませるのは間違っていると思うのだけれど。


最近『影響力の武器』などを読んで、ちょっと意見が変わってきている。確かに、ある程度理性が育ってくれば、自分の頭で虚構と現実をしっかり区別したり、世の中の裏表を知った上で、自分の心に従って行動することができる(出来なければならない)けれど、それが育たない段階では、社会の共通認識となる「良心」的なものを刷り込んで、それが安定するまでの期間を置くのも、有りなのではないか、とも考えている。

そんな、良心的な型にはまった人間ばかりで世の中が面白いか、という問題はあるのだけれど、本書で取り上げられている「発砲率」の問題等を考えると、人の良心が都合よく操作されてしまう危険を冒すよりは、あまり問題のなさそうな情報だけにアクセスを絞っておく、というのが妥当なようにも感じる。

メディアに心を蝕まれる子どもたち (角川SSC新書 32)
--以下ネタバレあり--

発砲率というのは、戦争に参加した兵士が、どれ位銃弾を撃ったか、という率。第二次大戦頃までは10%代だったのが、軍によるある種の心理操作・・訓練によって、ベトナム戦争の頃には95%まで向上。最近は、アメリカ軍が提供するゲーム「アーミー・オブ・アメリカ」なんて物も提供されているので、発砲への抵抗はどんどん下がっているのだろう。(アメリカ軍と、その提供するゲームの話は『貧困大国アメリカ』も参照。)

しかし、子供たちを無菌培養するために、メディアに流す情報を「有害」とそうでないものに誰かが判別するというのは、言論の自由の問題もあり難しい。
結局、著者が言うように、テレビ(やネット)を見る時間を減らして、実体験を増やすようにしていくしかないのだろうか。
あるいは、メディアなどから受けたマイナスの影響を、穏当な形で発散させられるような方法を考えるか。それには、大人がもっと子育てに手を掛ける必要があるのだろうけれど、言うは易し、おこなうは難し。。


いずれにせよ、テレビにしろ、ネットにしろ、メディア側がそのメディアの利用を制限するように求めることはありえない。利用しすぎているメディアの有害な側面について、冷静に考えてみるのも、時には必要だろう。
もちろん、本の読みすぎの問題もね。(自戒)

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[2008.05.08(Thu) 20:29] 社会Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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2010年南アフリカW杯が危ない 木崎伸也 

2008年05月08日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
「世界有数の犯罪都市」と言われるヨハネスブルグ(ツワネ)を擁する南アフリカでの開催となる2010年のサッカーW杯。
ドイツW杯を機にドイツヨーロッパに移り住んだほどの著者が、体当たりの現地取材で調査した現状のレポート。

前回のドイツ大会では、日本人も大挙してドイツに行ったのだけれど、次回の南アフリカ大会は・・・この本を読むとはっきり言って、怖くて見に行くのはお薦めできない。
とにかく治安が悪い。

以下、本書でも引用されている、外務省の海外安全ホームページより

ヨハネスブルグのダウンタウン地区(カールトンセンター付近からヨハネスブルグ中央駅及びヒルブローに至る地区)では、殺人、強盗、強姦、恐喝、暴行、ひったくり、車上狙い、麻薬売買等の犯罪が時間、場所を問わず発生しています。

これらの事件は白昼、人通りが多い所でも発生しており、中には長距離バスから下車した直後に襲われた例もありますので、可能な限り公共輸送機関の利用は避け、同地区には立ち入らないようお勧めします。
なお、タクシーの利用については、信頼できる業者が少ないため、旅行者の方にはお勧めできません。


・・・・・。

また、今までに比較的安全とされてきた市郊外においても、ショッピングセンター内の銀行や宝石店に武装強盗団が押し入り、警備員や駆けつけた警官との間で銃撃戦となった事例が増えています。また、在留邦人がよく利用するレストラン周辺でも拳銃強盗被害が発生していますので、注意が必要です。



・・・・・・・・・まあ、こんな感じの土地。

W杯の予選抽選会でも、大会関係者が泊まった、厳重に警備されていたホテルで大会役員のスーツケースが盗難されたり、と油断も隙も無い。
おまけに、予選抽選会の直前、FIFA関係者に招待されていた観光客が、電流が流れる鉄柵で守られていたゴルフ場内で射殺される始末。

また、スタジアムという箱は作っているけれど、そこまでの交通機関が追いついておらず、宿泊施設の準備も追いついていない。あまりに追いついていないので、大会の「公認」宿泊施設として、ちゃんとしたホテルではなく、自宅を改装したゲストハウス等も登録している異例の事態だという。
そういったゲストハウスは郊外にあることが多く、安全な移動ができるか心もとない。

2010年南アフリカW杯が危ない! (角川SSC新書 26)

とまあ、とにかくマイナスの要素が多いのだけれど・・・
--以下ネタバレあり--

こんな危険な国で大会を開くのは、FIFA内の政治的な都合+『レアメタルパニック』などでも述べられているように、レアメタル資源が豊富な南アフリカにいい顔をしておきたいという、国際政治の都合。
そのために、のこのこ出かけて行って被害にあうのでは、サッカーファンはたまったものではない。
よほど、覚悟して厳重な自衛策を取らない限り、行って無事に済むとは思えない。

とはいえ、著者は南アフリカ大会には期待している。
アパルトヘイトが終わったとは言いながら、その影響が色濃く残っているかの国の国民が一つになるために、サッカーが一つの役割を果たしてくれるのではないか、と。
確かに、スポーツには人を結びつける魅力があるし、本書の終盤を読んでいると、著者のサッカーへの愛を感じる。

その気持ちはわかるけれど、正直自分で行きたいとは思えないし、周囲に行こうとする人がいれば、止めてしまうだろう。
成功はして欲しいけれど、それに対して、自分や周囲の人が積極的に参加できるかというと、ちょっと無理という、総論賛成、各論反対という情けない感想しか持てないのが、ちょっと悔しいところ。

出来るのは、この機会に、かの国の現状に対して目を向けることくらいか。。

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[2008.05.08(Thu) 00:54] 未分類Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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震度0 横山秀夫 

2008年05月03日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
舞台は、とある地方警察
神戸を大震災が襲った日、周囲からの信頼も厚い警務課長が姿を消した。

彼を心配する者、保身に走る者、組織を守ろうとする者、天下り先を確保しようとする者、そして、傍観者として自体を楽しむ者。警察署の幹部達が、それぞれも思惑からてんでバラバラな行動をとり始め、組織が軋みはじめる。
大震災の悲惨な状況を尻目に、繰り広げられる権力闘争。攻守はめまぐるしく入れ替わり、争いはますますヒートアップし、一向に警務課長の行方の知れないまま、周辺情報だけが溢れていく。
果たして、警務課長はどこへ消えたのか・・

閉じた社会での歪んだ人間関係、立場の異なる者同士の疑心暗鬼と反目。
やがて、秘めてきた過去の影が姿をあらわし、物語は進展する。

震度0 (朝日文庫 よ 15-1) (朝日文庫 よ 15-1)

震災という非常事態そっちのけで、権力闘争を始める姿が、組織の論理や自己のエゴで争う醜さを際立たせてくれている。
--以下ネタバレあり--

階級社会、官舎という閉じた人間関係、キャリア・準キャリア・叩き上げという立場の違いが組織の歪みを生み、醜い争いを続ける登場人物たちの姿からは、警察という組織の抱える歪みと、それによって変わってしまった人の心の荒みようが伝わってきて、痛々しい。
個人の思いなどそっちのけで、組織の中の男社会の論理に染まった行動が、人の心を踏みにじっていく。

そして、どうしようもなくズルズルと墜ちて、行き着くところまで行き着いた末に、ようやく己の思いに立ち返る幹部たち(の一部)。

大震災と同時に襲った、この地方警察の屋台骨を揺るがす事態にも、どうにか向き合って立て直していける。そういう希望を持たせるラストで、ふっと心が軽くなった。


・・・でも、キャリア組の二人はダメかな? あれは。ブータロウ君も。
まあ、中にはそういう人もいるということで?

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[2008.05.03(Sat) 01:58] ミステリTrackback(0) | Comments(0) 見る▼
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脱・金融大恐慌1993-2008 松藤民輔 

2008年05月02日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
サブプライム問題を早期に警告した『アメリカ経済終わりの始まり』から始まるシリーズの著者による、15年前の著作の復刻本。
復刻と言っても、単なる復刻ではなく、現在の視点から色々と補足がされていて面白い。

こうして改めてみてみると、「大勢において」著者の予測は当たっているが、完全に外している部分も多い。
さて、これをどう見るか。ニコラス・タレブの言うようなことなのか、それとも、別の要因なのか。

そういえば、著者は3月の金の調整幅は20-40%程度の可能性があると言ってたけれど、実際は10%だったり。
最近も「4/18が大きな転換点になる」と予測したけれど、市場は問題なくスルー。しばらくして「1-2週間遅れて起きる」とフォローしたかと思えば、最近は歴代の暴落は10月に起きている、なんてエントリをしれっと上げてみたりと、結構お茶目(←?)。
もっとも、著者は自分が予測屋だとは一言も言っておらず、予測を外してきたことも公言しているので、外れたことを色々せめるのはお門違いだろう。
(世の中には、3ヶ月周期に従ってこの4月も暴落が起きる、なんって著書に書いてしまった、自称「予言者」さんもいらっしゃるし、それと比べたら遥かにまとも)

脱・金融大恐慌1993-2008

たとえば、著者が大幅に読み違えたことの一つ。
--以下ネタバレあり--

アメリカ経済のITバブルによる株価の上昇は、まったくの予想外。
つまり、テクノロジーのブレイクスルーのタイミングと、それが社会に影響を与える程度を正確に予測することは困難であり、事前の予測は、ある種のブレイクスルーの存在で泡と化す可能性がある。

あらゆる予測には、その前提条件があるはずで、前提条件が狂った場合には、予測を切り替えなければならない。
あるいは、もう一歩進んで「バスカヴィル家の犬」の理論。あるデータから当然起こるべきことが起きなかった場合、そこには、自分が把握できていない「何か」が働いている。その「何か」を突き止めることが大事だったりする。

だから、前提条件をはっきりと把握していない他人の予測に乗っかるのは、非情に危険。
前提が変わったときには、考えをスパッと切り替えて、臆面も無く逆の立場を取るだけの柔軟性が大切。これは、「一貫性」の性質と何ら反するものではないのだけれど、その辺を理解せずに古い見解に固執してしまうと、痛い目を見る。

単にあたりハズレを云々するのではなく、過去に著者がどう考えたのか、その結果どうだったのか、そしてこれからの動きはどうなるのか、いろいろ考えて楽しみたい一冊。

<関連エントリ>
『世界バブル経済終わりの始まり』
『無法バブルマネー終わりの始まり』

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[2008.05.02(Fri) 01:04] 経済Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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手にとるように世界史がわかる本(第2版) 小松田直 

2008年05月01日 ()
読んだ本。 * 本・雑誌
人類の起源から、21世紀の世界が抱える問題まで、世界史のトピックを広く網羅した一冊。
これだけ広い領域になると、色々と知らない話題があり、へー、そうだったのか、と関心することしきり。
少し例を挙げると、中国政府が宗教団体に厳しい理由とか、「ハーメルンの笛吹き男」に関する説とか、トレンチコートの起源とか。

もっとも、雑学的な知識は、こうやって歴史を通して眺めることで得られるものの副産物でしかない。

手にとるように世界史がわかる本 第2版

そういえば、P61の伏羲と神農のイラストが逆。まさか、前の版から間違いっぱなしということはないよね・・
--以下ネタバレあり--

長い歴史をずっと通して歴史を見てみると、なんども何度も、同じようなことを繰り返しているのがよくわかる。
国が興っては滅び、人が出世しては失脚し。まさに、栄枯盛衰、盛者必衰。
だから、今、目の前にある社会も、世界情勢も、あくまでただの経過点でしかなく、絶対のものじゃない。目の前にあるものがいつまでも続くと思っていると変化の兆しを見逃してしまうけれど、すべては常に変わるものだと考えれば、多少は変化に敏感になる・・・かもしれない。

同じようなミスを繰り返していること。イギリスは反共産主義に利用しようとしたナチスに痛い目にあわされ、アメリカは利用してきたアルカイダに痛い目にあわされている。
変化に抵抗する懐古趣味の傾向。王政を倒したあと、世情が不安定になれば、また王政を懐かしみ、共産党が倒れた後、経済が上手くいかないと共産党時代を懐かしむ。
どんな革命政府も腐敗する。高い理想は、簡単に暴力へと姿を変える。共産主義は個人崇拝へと変化する。
戦争は、今も昔も国民の目を外に向けさせ、お粗末な内政から目をそらす強力な手段である。
国家や文化が、いかに利己的に、他者に対して冷酷になれるか。


先人が教えてくれる貴重な教訓の数々。
しっかり学んで、今を良く生きたいものだ。

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[2008.05.01(Thu) 01:46] 歴史物Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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